休みの日、都会に向かう交通手段はJRではなく、京急を選ぶようになった。車窓の風景、快適なシート、乗客の雰囲気、この私鉄には旅情を誘うゆるやかなムードがある。
乗り換えもJRとちがって、同じホームで可能なのも、楽ちん。
横浜・黄金町「ジャック&ベティー」で映画『人生フルーツ』を観るのが、この小さな旅の目的。映画好きな人たちの熱気が温かい。『ニューシネマパラダイス』に登場するシチリア島のプライベート・シアターみたいな雰囲気が好き。
映画を鑑賞後、黄金町をゆっくり歩く。
町の佇まい、味わいに魅せられ、何度も足を止めて見入る。なかなか前に進めない。そんな町はきっと佳い町だ。
妻が勧める洋食店が休憩に入っていたので、遅い昼食を食べにほかを探す。
大岡川と、架かる鉄橋の風情がたまらなくいい。なぜか強く惹かれる。かつて祖父がよく遊んでいたであろう場所。水辺好きだった祖父の記憶が風景と重なる。心に沁みる。
黄金町駅そばの喫茶店に入る。デヴィッド・ボウイがBGMの店内でナポリタンをいただく。おもいのほか旨く、店もとても居心地がよい。
休日の午後を喫茶店でおしゃべりしながら穏やかに過ごす。
冬の碧く澄んだ光が建物のだんだん下のほうへ移っていく。その情景がせつない。幅広い道路、緑豊かな丘、低い建物、広い空。横浜の町は東京とは異質の景色がある。ぼくはその特有の眺めをとても好ましく思う。横浜・南太田生まれ・育ちの祖父のDNAをたぶん継いでいるのかもしれない。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.