2016年8月20日土曜日

セヴィルロウの眼鏡



購入したのは20年ほど前、原宿の「オプティシャン・ロイド」にて。近視が強い自分の眼に合うものを、フレームのクオリティをふくめて選ぼうとすると、当時は驚くほど高額に。それでも、レンズは消耗品と考えながらも、ずっと飽きずに長く愛用できるフレームには妥協したくはないと背伸びして求めました。金に銅や銀を混ぜて成形した18Kのクラシカルなフレームは緑青が出るほど使いこんでもいまだ現役。自分の選択は間違っていなかったようです。背広の語源ともなったといわれる、老舗のテイラーをはじめ一流店が並ぶロンドンのストリート、セヴィルロウをブランド名に掲げるアルガワークスの定番製品。クラシック・コレクションのラインナップとしてぼくの「The Panto」(レンズを薄くできる最小径のサイズ39)は当たり前のように、つくられ続けています。独自製法により抜群のしなやかな強度を誇り、深酔いで地面に倒れ、フレームがねじ曲がってしまったときも、見事、もとのかたちに修復できました。世界中の海をともに旅してきたこの眼鏡をさらにさまざまな場面で使っていきたいと、政治混乱でポンドの価値が下がったタイミングをはかり、クリップ装着タイプのサングラスフレーム「The Panto Sunclip」をロンドンの工房にオーダーしました。




ずっと変わらぬ姿勢で、かたくなに基本の造形をつくり続ける英国の精神に敬意を払いたくなります。しかし、制作にあたりフレームの径と眼と眼の間のサイズを職人が問い合わせてくる緻密さがありながら、微妙にズレが生じているのはご愛嬌。MADE IN ENGLANDを盲目的に信奉するのではなく、精度のアバウトさを大らかに受け止めなくてはいけません。




かなりしっかりとドッキングします。はじめは装着法にとまどいますが、慣れるとスムーズに着脱できるようになります。このスムーズさを生むアバウトな余地加減も日本製品にはないよさではないかとポジティブに考えます。濃いオレンジブラウンに彩られたレンズ。装着して、いつものジョギングコースを走ると、見慣れた風景がアンバー一一色の劇的なものへと変化。その非日常感が新鮮で、走りに行くのが以前にもまして楽しくなりました。

LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm/f4
SIGMA DP3 MERRILL