2015年6月1日月曜日

美しい日曜日

 
Dominguinhos + João Donato / Plantio de Amor

天気予報がはずれ、朝から夏のような陽が射してきた鎌倉。街がまだ静かな午前9時に、カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュを訪ねました。マスター堀内隆志さんとライター小柳帝さんが熱いトークを交わす。その待望のイヴェント第2回に参加したのでした。本題である「映画から聴こえてくる音楽」へ入る前に、両人が今、気になっている音楽と映像についてトピックスとして言及されたのですが、いきなり「好き」が全開で、穏やかな口調のなかにも恋い焦がれるような熱を感じられて圧巻。たとえば、堀内さんが取り上げたのは、ブラジルを代表するアコーディオン奏者、ドミンギーニョス。ピアノのジョアン・ドナートとの共演が円熟の格好よさ。近々にお手頃な価格でドミンギーニョスの素晴らしいアルバムが発売されるようです。

Lowell / The Bells

小柳さんは、カナダのシンガー、ローウェルに注目。歌はもちろんのこと、カメラを回しっぱなしで(1カットで)撮影した映像を賞賛。一見ラフに見えて、実は緻密な構成と相当なリハーサルを経て出来上がったものだろうと、撮り手の今後に、高い可能性を予感されているようでした。
日本ではまだ無名の才能をいちはやく見出す先見性が小柳さんのすごいところ。

DOM LA NENA / CANÇÃO BOBA

さらに堀内さんはドム・ラ・ネナにメロメロだとか。ブラジル出身のシンガーソングライターでありチェリストの彼女。ブラジルとフランス、アルゼンチンなどの音楽要素をミックスした音楽。多彩な才能だけでなく、フランス映画のごとく、淡く耽美なミュージックビデオの映像美に魅せられているよう。その映像を撮るJEREMIAH君もしっかりマークしていました。彼女のパートナーらしい彼は、youtubeにもたくさんの映像作品をアップロードしています。堀内さんが彼女のことをTwitterで書くたびに、JEREMIAH君は決まってReTweetしてくるのだそうです。

Romy Schneider & Michel Piccoli / La chanson d'Hélène 

 冒頭から全開で突っ走り、もはやトピックスの域を超えた怒涛かつ濃密な進行。すでにお腹いっぱいになってからメインディッシュが供されました。映画から聴こえる音楽は両人を虜にしたフランス映画より。「エレ-ヌの歌(La chanson d’Hélène)」のサウンドトラックが切ないほどに美しく、心に染み入ります。1970年のクロード・ソーテ監督の映画「過ぎ去りし日(Les choses de la vie)」に挿しこまれた一曲。主役のロミー・シュナイダーの美貌にしんみり。この曲ならびにタイトルには堀内さんの思い入れが強い。かつてプロデュースしたアルバムへのあふれる想いが、選曲からさりげなく伝わってきます。
この日、 堀内さんと小柳さんが紹介された音楽は、そのほとんどが初めて耳にするものでした。歌い手も知らない人ばかり。これほど素敵な人と歌、映像をいったいどうやって探し当てるのか感嘆し、同時にたくさんの「好き」に触れ、とても刺激を受けます。第3回目もぜひ二人の熱情に魅了されたいな。次なる日曜日が待ち遠しい!

 さて、イヴェントとは無関係なのですが、映像が投影されるスクリーン背後の、少年の珍妙な行動の数々が視界の片隅に入り、ひそかに気になって仕方がありませんでした。あの子はいったい何者なのだろう?